【株の本質】株式市場は壮大な転売市場だ

目次

はじめに

株は企業への投資だと言われますが、本当にそうなのでしょうか。
考えてみれば、企業にお金が直接入るのは、新規公開株(IPO)や株式増資するときだけです。

しかし、それ以外の市場での売買(大半の取引がこれに当たります)は、企業の意思とは無関係に、すでに発行された株式が個人間でやり取りされているにすぎません。
あなたが誰かから株を購入する際に支払ったお金は、その企業に渡るのではなく、あなたに株を売ってくれた人に支払われます。これはまさに転売の構図と言えます。

本日は、このような「転売」という視点から、株式の売買について考えていきたいと思います。

株式会社の歴史から株の売買について考える

株式を購入する理由としては、主に2つのパターンが考えられます。

  • 配当金や株主優待を受け取ること
  • 株価の上昇による売却益(値上がり益)を得ること

株を購入する人の多くは、売却益を期待しているかもしれません。しかし、株式の購入理由としてより本質的なものは配当金です。これは株式会社の歴史を遡ると明らかになります。

最初の株式会社の一つと言われるイギリスの東インド会社は、アジアの特産品(香辛料など)の転売を生業としていました。船団を組んでインドまで行き、そこで仕入れた希少な商品をイギリスで高く売ることで大きな利益を得ようとしました。

しかし、長期間にわたる航海には莫大な費用がかかります。船の建造・維持費、船員の給料など、多額の資金が必要です。そこで、資金を集めるために出資者を募ることになります。「航海に必要なお金を出してください」と呼びかけるわけです。

ただでお金を出してくれる人はいないため、見返りとして、航海が成功して得られた利益の一部を出資者にあげることを約束しました。これが「配当」の始まりです。配当が魅力的な見返りだったからこそ、人々はお金を出資しようという気持ちになったのです。

そして、誰がどれだけ出資してくれたかを記録し、配当を受け取る権利を証明するために発行されたのが「株式」という証書です。
つまり、株式会社が生まれた経緯を考えると、株式とは本来、企業の上げた利益の分配(配当)を受け取るための証明書であり、配当こそが株式を保有する本質的な理由だったと言えます

なぜ株式が転売されるようになったか


配当を受け取るための証明書であった株式が、なぜ市場で売買(転売)されるようになったのでしょうか。
重要なポイントは以下の2点です。

  • 配当が魅力的だったため、株を欲しい人が増えた(需要の増加)
  • 発行される株式の数に限りがあった(供給の制限)

特に2点目の供給制限が重要です。
もし企業が株式を無限に発行できるなら、株を欲しい人は直接企業から買えば済み、目的の配当を受け取れるはずです。

しかし、企業も資金調達の計画に基づき、発行できる株式の数には限りがあります。無限に発行すると、出資額が増えるだけでなく、将来支払う配当の総額も増大するからです。

しかし、配当が魅力的なため、株を欲しい人は増え続けます。そうすると、すでに株を持っている人から「高くても良いから譲ってほしい」という人が現れます
一方、株を持っている側も「そんなに高く買ってくれるなら売ろう」という気持ちになります。

ここに転売取引が生まれます。


さらに発展し、個人間で売買する手間を省き、買いたい人と売りたい人を効率的に結びつける仕組みとして「株式市場」が発展していきました。
ここで興味深いのは、初めは皆が配当目的で株を買っていたはずなのに、一度市場での売買が始まると、別の価値を見出す人が現れることです。

それが「売却益」、つまり転売益です。
配当は関係なく、より高く売ることだけを目的として株を買う人が増えてきます。
転売益で儲かる人が増えると、その噂を聞きつけ、売却益のみを狙って購入する人が増加します。そして買う人が増えれば、需要増加により株価は上昇します。これがエスカレートした結果がバブルです。

このように、「配当の証明書としての株」という本来の認識は薄れ、市場で取引される「転売対象」としての側面が強くなっていったのです。
今日の株式市場において、純粋に配当のみを目的に株式を購入している人がどれほどいるでしょうか。配当目当ての人ももちろんいますが、株価が大きく上昇すれば売却を検討するのが一般的でしょう。株を転売対象として見ない人はいないと言っても過言ではありません。

PS5の転売との比較

ここで、一時期話題になったPS5転売との比較から、株の転売についてさらに理解を深めていきたいと思います。

以前PS5の転売が成立していた理由は以下の2点です。

  • ゲーム機としての魅力が高く、欲しい人がたくさんいる(需要が多い)
  • 製造上の都合などから、生産・供給される台数に限りがある(供給が制限されている)

これは、株式が転売されるようになった理由と共通しています。
つまり、需要が多いのに供給が制限されているものは、何でも転売対象になり得るということが分かります。
過去にはオランダでチューリップの球根が高値で取引され、チューリップバブルと呼ばれる現象も起こりました。

PS5を購入する人の目的も、主に2パターンに分けられます。

  • PS5でゲームそのものを楽しみたい
  • 転売して利益を得たい

これは、株式の購入理由であった「配当金や株主優待」「売却益」という2パターンに対応しています。
つまり、配当金目的で購入するという行為は、PS5でゲーム自体を楽しみたいという行為に相当すると言えます。

購入目的株式PS5
本質的目的配当金・優待ゲームを楽しむ
二次的目的売却益転売益

株式市場が面白いのは、この「転売益を狙う」という行為があまりにも一般的になりすぎて、本質的な購入目的である配当金の存在感が小さくなっている点です。
もしPS5のゲーム内容が魅力的でなければ需要は減少するでしょう。例えば、仮に最新機種でありながらゲーム体験が旧世代機並みであれば、購入を躊躇する人が増えるはずです。

でも、株式の世界ではそう単純ではありません。例えば、近年は配当金を出さずに、得た利益をすべて企業の成長に充てる企業も多くあります。
このような企業は、「自社が成長すれば株価が上がるだろう → 結果として株主は売却益を得られるだろう」という理屈で株主への還元を示唆しているわけです。

もちろん、企業の成長と株価には相関がありますが、成長すれば株価が上がるというのも、ある種の期待に基づいた側面があります。
企業の実績と株価には直接的な関係は何もなく、多くの市場参加者が企業の成長は株価上昇につながると思い込んでいるからこそ、実際に買いが集まり株価が上昇するという側面が強いのです。

配当金を出さずに売却益で株主に報いるというのは、PS5の世界で例えるなら、「ゲームソフトは出さないが、将来的にPS5の価格は上がるはずだから、上がったときに売って儲けてほしい」と言っているのと同じような構図です。

一般的な感覚からすると不思議に思えるかもしれませんが、これが株式市場においては常識として成り立っているのです。だからこそ、株式市場は興味深く、奥深いと感じるのです。

最後に

このように、株式市場は多くの興味深い側面を持っています。
株式の価値は企業の業績と結び付けられがちですが、本来、株式の価値は、その企業が将来生み出すであろう配当にその本質的な根拠を求めるべきものです。

PS5の例で言えば、メーカーであるソニー全体の業績が、個々のPS5本体の価格に直接的な影響を与えるわけではありません。PS5本体の価値に直接関わるのは、提供されるゲームという「コンテンツそのもの」の魅力でしょう。

しかし、壮大な転売市場となってしまった株式市場では、そんな本質はどこ吹く風です。
株価は単に需要と供給バランスによってのみ決まるため、人々の集合的な心理が価格を左右しているのです。

このように、時に非合理にも見える人々の思惑に左右される株式市場の価格形成は、非常に複雑です。だからこそ、個別の株の動向を予測して売買を繰り返すよりも、市場全体という大きな流れに、分散投資でコツコツと乗っていくインデックス投資が、私にとって最も納得のいく、そして合理的な選択肢だと考えています。

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