役割が似ていて非常に分かりづらいブリッジ、スイッチ、ハブの違いですが、歴史的背景を見ると、その違いの本質がよく分かります。そこで、本記事では、歴史的背景を踏まえた両者の違いを解説します。
基本的な役割
ブリッジとスイッチ(スイッチングハブ)は、どちらもOSI参照モデルのデータリンク層(レイヤ2)で動作するネットワーク機器です。
主な目的は、
受信したフレームの宛先MACアドレスを解析し、適切なポートへ中継(転送)または遮断する
ことです。
一方で、ハブ(リピータハブ)は物理層(レイヤ1)で動作する機器で、受信したデータをすべてのポートへ送信します。
歴史的背景
これらの機器が登場した背景には、初期のイーサーネットLANが抱えていた課題が深く関わっています。
ブリッジの登場:コリジョンドメインの分割
かつて、LANの物理トポロジーがバス型だった時代には、一本の同軸ケーブルを複数の機器で共有していました。

この環境では複数の機器が同時データを送信しようとすると、コリジョン(衝突)が発生し、データが破損してしまう問題がありました。
このコリジョンを検出し、再送制御を行う方式がCSMA/CDです。しかし、接続される機器が増えるほどコリジョンの発生頻度は高まり、ネットワーク全体のパフォーマンスが低下していました。
そこで登場したのがブリッジです。ブリッジはネットワークを物理的に複数セグメントに分割し、コリジョンの影響範囲を限定しました。この分割された範囲をコリジョンドメインと呼びます。

当時のブリッジの特徴を以下にまとめます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ポート数 | 基本2ポート |
| 処理の主体 | ソフトウェア |
| 処理速度 | 遅い |
| 動作原理 | MACアドレステーブルの学習(どのMACアドレスの機器が、どのポートの先に接続されているか) |
スイッチ(スイッチングハブ)の登場
1990年に10BASE-Tが規格化され、同軸ケーブルからツイストペアケーブルが使用されるようになると、その取り回しのしやすさから、各機器をリピータハブに接続するスター型トポロジーが普及し始めます。

しかし、リピータハブは受信したデータを電気的に増幅して全てのポートに送信するだけの単純な機器であるため、依然としてネットワーク全体が単一のコリジョンドメインのままでした。
つまり、接続されているどれか1台の機器がデータを送信すると、他の全ての機器がそれを受信するため、CSMA/CDによる制御が必要な状況は変わりませんでした。
この問題を解決するために、リピータハブの各ポートにブリッジの機能を持たせたスイッチングハブ(一般的にスイッチと呼ばれる)が登場しました。
スイッチングハブでは、各ポート-端末間が独立したコリジョンドメインとなります。
そのため、あるポート-端末間の通信が他のポート-端末間の通信と衝突(コリジョン)することなく、複数の機器が同時に、スムーズにデータをやり取りできます。これにより、ネットワークのパフォーマンスが劇的に向上しました。

さらにスター型トポロジーの性質上、上記コリジョンドメインにはそれぞれ一つの端末(A,B,C,D)しか接続されていないため、コリジョンドメイン内で衝突は起こり得ません。
よってここに、コリジョンという概念そのものがなくなりました。
スイッチの特徴を以下にまとめます。
処理を高速化するため、処理の主体がハードウェアとなっています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ポート数 | 多数 |
| 処理の主体 | ハードウェア |
| 処理速度 | 速い |
| 動作原理 | MACアドレステーブルの学習(どのMACアドレスの機器が、どのポートの先に接続されているか) |
両者の違いまとめ
あらためて、両者の違いをまとめます。
| 要素 | ブリッジ | スイッチ |
|---|---|---|
| 使用時期 | 〜1990年代 | 1990年代〜 |
| 必要となった背景 | バス型物理トポロジーで、コリジョンドメインを分割したい | スター型物理トポロジーで、コリジョンドメインを分割したい |
| ポート数 | 基本2ポート | 多数 |
| 処理の主体 | ソフトウェア | ハードウェア |
| 処理速度 | 遅い | 速い |
| 動作原理 | MACアドレステーブル | MACアドレステーブル |
ブリッジとスイッチは、どちらもフレームの宛先MACアドレスに基づいて転送・フィルタリングを行うという基本的な役割は同じです。
しかし、歴史的背景から登場理由を考えると、この二つの違いがよく分かるのではないでしょうか。
この知識が、皆さんのネットワークへの理解を深める一助となれば幸いです。
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