熱力学を勉強していたときに完全微分と不完全微分がよくわからなかったので、まとめておく。
完全微分、不完全微分の定義
まず完全微分の定義について。
\(x = (x_1, x_2, … , x_n)\)が与えられたとき、以下を微分形式という。
\[\omega = f_1(x)dx_1 + f_2(x)dx_2 + … + f_n(x)dx_n\]
このとき、ωがある関数Fの全微分dFに等しいとき、ωは完全微分である、という。
\[dF = \frac{\partial F}{\partial x_1}dx_1 + \frac{\partial F}{\partial x_2}dx_2 + … + \frac{\partial F}{\partial x_n}dx_n \]
逆にωがどんな関数Fの全微分dFとも等しくならない場合、ωは不完全微分である、という。
完全微分となる条件
物理学からは少し脱線するが、ωが完全微分となる条件を以下に示す。ここでは簡単のため、2変数(x,y)の場合について考える。
上記の定義から、ωが完全微分であるとき以下が成り立つ。
\[f_1(x, y) = \frac{\partial F}{\partial x}, f_2(x, y) = \frac{\partial F}{\partial y} \]
ここで、シュワルツの定理より、
\[\frac{\partial F}{\partial x \partial y} = \frac{\partial F}{\partial y \partial x} \]
が成り立つので、ωの係数について以下等式が成り立つ。
\[\frac{f_1(x, y)}{\partial y} = \frac{f_2(x, y)}{\partial x} \]
これがωが完全微分であるための条件である。
物理的意味
ωが完全微分である、とはある関数Fの全微分dFと等しいことであった。
逆に言うと、ωを積分することで、一意の関数Fが求まるとも言える。
よってωが完全微分であるとき、ωを積分した関数Fが存在している。そして、関数Fが存在するとはつまり状態量であることを意味している。
なぜかというと、関数Fが存在するとは、ある点\(\boldsymbol{x}\)における\(F(\boldsymbol{x})\)が一意に定まる(=状態量)ことだからである。
逆に不完全微分の場合は、定義通りではあるが、ωを積分しても一意の関数が求まらない。
その場合にωを積分するとどうなるかというと、積分経路によって異なる積分値が算出される。
(逆に言うと完全微分の場合は積分経路によらず、積分値は一意に定まる。だから関数Fが定義できる)
よって、ある点\(\boldsymbol{x}\)における値がそこに至るまでの経路に依存して様々な値を取り、関数Fが定義できないのである。
このような量を経路依存量と呼ぶ。
少しややこしくはあるが、物理的側面から見れば、結局(S, U, Vのような)状態量であればそれぞれ対応する関数があり、(dS, dU, dVのような)全微分が定義できる。
よって、定義から当然dS, dU, dVは完全微分である。
一方で、仕事(W)や熱(Q)のような経路依存量は関数\(W(\boldsymbol{x})\)や\(Q(\boldsymbol{x})\)は定義できないため、その全微分dW, dQは存在しない。
よって仕事や熱の微小変化量は全微分と区別し、d’W, d’Qのように記載することが多い。
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